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外国人材“受け入れ”ではなく“選んでもらう”時代 「育成就労制度」で転籍も可能に 生活環境の整備も重要に【福井】

2025.01.14 19:00

人手不足を解消しようと、外国人材の受け入れが増加しています。福井県内でも、2023年10月末時点のデータで1万1101人の外国人労働者が働いていて、この10年で2倍以上に増えています。(2013年は4693人)背景にあるのは深刻な人手不足。ただ、高齢化などの問題を抱える農業の分野では、外国人労働者の参入は進んでいないのが現状です。何が課題となっているのか、外国人を雇用する農園などを取材しました。
  
2024年10月から福井県内の介護現場でミャンマー人の技能実習生13人が働いています。   
 
県は5年前から、介護や建設業界などで外国人材を受け入れようと取り組みを進めています。彼らは、県が現地で開いた研修講座で、介護の技術だけでなく福井の方言や歴史、文化などについて学んできました。
 
県が外国人材の確保のため取り組みを進める背景には、深刻な人手不足があります。県経営者協会が人手不足について県内企業143社にアンケートを取ったところ、「すべての年齢で不足」「若手中堅の不足」と回答した企業が6割を超え、多くの企業で人手が不足している現状が明らかになりました。
 
人材確保などに取り組む県産業人材室・谷口室長は「有効求人倍率が全国1位という高い水準で推移している福井県にとっては、企業にとって本当に人手不足が深刻。事業を起こしたくても人が取れないという企業がたくさんある。やはり外国人材の活用を一つの選択肢として考えてもらいたい」と話します。
  
特に、農業の分野では、県内でも高齢化や後継者不足などの問題を抱えています。2020年時点での農業従事者は約1万人と、10年前の半数近くまで減少していて、人手不足に歯止めがかかりません。(農業センサスより)
  
こうした状況を受け、県などは2024年7月、農業者を対象に外国人材受け入れの研修会を開きました。福井市で白ネギを栽培する小西農園では、特定技能の資格を持つ外国人を雇用していていて、この農園で行われた現地視察には、受け入れを検討する農家らが参加しました。
 
小西農園では、1年ほど前から農業経験がある特定技能1号のロヒマットさんが働いています。
  
ロヒマットさんは「お金を貯めたい。国へ帰ったら農業の会社を建てたい」と話します。ロヒマットさんを雇う小西代表は「僕らはまだ30代で体力があるが、年々腰が痛かったりしんどくなったりしてくるので、若い外国人の力を借りたいと思い、採用した」とその理由を話します。
 
現在、県内の農業分野で働く外国人は78人いますが、他の業種と比べて、受け入れが進んでいない現状があります。受け入れを検討する農業者からは「集合住宅を借りたり、家具などをすべて用意して迎える必要があるのか」「コミュニケーションがとりにくいと聞くが、作業の説明などは、どう工夫しているのか」などといった質問が寄せられていました。
  
年が明け、白ネギの収穫が続く小西農園を再び訪れました。夏は機械で収穫できる白ネギも、土がぬかるむ冬は、手掘りの作業となります。厳しい重労働の時期ですが、2024年11月には、新たにインドネシア人のエルファンダさんが加わり、労働力はさらに強化されました。
 
小西代表は「期待以上の働きで、若い力はすごい。すごいスピードで掘ってくれる。一度教えた仕事は飲み込みが早く、かなり助かっている。今後、日本で運転免許を取得してもらえれば軽トラも運転してもらえて、作業の幅も広がる」と期待を込めます。
 
仕事の合間や休みの日には、漢字の勉強を欠かさないという真面目な2人。農園では、1日5回のお祈りができるよう配慮するなど、個人を尊重することを大切にしています。
 
優秀な外国人材に長く働いてもらうためには、外国人との共生も重要な課題です。県産業人材室・谷口室長は「日本、福井で生活、就労することにより、自分の夢や希望を実現させたいと考えている外国人が多くいる。福井に行ってよかったと思ってもらえるよう、外国人材を労働力ではなく1人の人として温かく迎えたい」と話します。
  
外国人労働者については、技能実習制度に代わり「育成就労制度」が始まります。今後は希望すれば職場を変わる「転籍」も可能となるため、仕事だけでなく、生活環境も整えないと、外国人材は定着しない可能性があります。
 
課題は様々あり、外国人材の住居が確保できない、移動手段が少ないという雇用側の問題に加え、外国人からは「地域コミュニティや生活圏の情報が少ない」という声も上がっています。

長く続いた技能実習制度の影響もあり、外国人材が「安い労働力」とみられがちですが、これからは日本人と同等に働いていく時代。外国人を受け入れるのではなく、選んでもらうために、雇用する側だけでなく、地域住民も、共に生きる社会について考える必要に迫られています。

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