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能登半島地震から1年 「雪が降る前に少しでも」被災地に通い続ける69歳防災士 宿泊所なく「人が全然足りない」
能登半島地震から1年。福井県敦賀市から、災害ボランティアとして継続的に現地に通う69歳の男性がいる。「まだまだ人が足りていない」と焦りと憤りを抱えながら活動を続ける男性に、いま必要なことは何なのかを聞いた。
12月16日。「1カ月経たないかな。20日ぶりぐらい」そう話し、男性は能登半島地震の被災地、輪島市を目指していた。災害ボランティアとして活動する敦賀市在住の防災士・角谷桂一さん(69)。
道路は車が通れるようになったものの、道路脇の看板は大きく傾き、震災の爪痕が残されたままだ。
敦賀から4時間以上かけて到着したのは、輪島市の山間部にある町野町(まちのまち)。元日の震災に続いて9月には豪雨に襲われ、二度、被災した。倒壊した家屋やがれきが、集落を埋め尽くしている。
「雪が降る前に少しでも進めてあげたい」そう話すと、角谷さんはさっそく長靴に履き替える。角谷さんは能登半島地震の発災から間もない2024年1月17日、何時間もかけて無数の亀裂や陥没がある道路を通り、災害ボランティアとして現地に入った。
「1月17日に初めて入ったとき、建物はみんな崩れかけて家の中ぐちゃぐちゃで…お年寄りにどこで寝ているのと聞いたら、瓦礫と瓦礫の間に布団を敷いて寝ていると聞いたときは、ショックだった」と当時の思いを語る。
以降、毎月のように現地に入り、珠洲市の避難所を拠点に運営サポートや瓦礫の撤去を手伝ったり、孤立集落で重機での作業をしたりと、被災者の支援を続けている。
住民は「すごい勢いで(まちが)変わってきている。角谷さんもそうだけど、皆さんが入ってくれて、どんどん変化している」と話す。
地元のボランティアも「徐々に気持ちが盛り上がってきたところに豪雨だったので、厳しい現実はあるが、いまは若干戻りつつあるかな」と前向きな言葉も口にする。
角谷さんが防災士の資格を取ったのは10年前。「60歳を前にして、定年を迎えて地元に帰ったときに何か地元の役に立てることはないかと考えた」という。防災士になってからは、防災教室や非常食作りの講師を務めたり、地区で避難訓練をしたりと地域の防災力を高めるための活動をしてきた。
角谷さんが防災士として被災地に入ったのは、能登半島地震が初めてだった。この1年間、時間をみつけては可能な限り能登半島に通い続けている。
「時期ごとにフェーズが変わっていく。最初は命を保つことに精一杯だし、その次はやっと瓦礫の整理にぼちぼちと手をかけ出したぐらい。瓦礫の処理が終わったところで、洪水だった。そこで被災者の心がもう一回折れて…」
そんな状況でも、ボランティアで泥かきを手伝った自宅の被災者が「もう一度やり直そうという気持ちになれた」と話してくれたことが、とても印象に残っているという。
豪雨から4カ月、元日の地震からは1年が経ち、地元の人からは前向きな言葉も聞かれるが、角谷さんは「まだまだ人が足りていない」と焦りと憤りを感じている。
「住み続けなければならない高齢のところに、人が入っていない。もっともっと人が入らないと進まない。全然足らない。もう1年経つのに、ボランティアが入っても受け入れる場所がない。宿泊施設もない。もっともっと行政が絡むべき」と訴える。
角谷さんは、今回の6日間のボランティア期間中、この場所から40分以上離れた場所にある集会場で寝泊まりしていた。ボランティアの不足には、こうした宿泊拠点が極端に少ないことも、要因の一つと指摘する。
なかなか進まない復旧への道。能登の地には、二度にわたる災害の爪痕が大きく刻まれたままだ。被災者と間近で接してきた防災士・角谷さんは、いま私たちに何を訴えるのか。
「まずは災害に備えてほしい。自分事のように、自分が災害にあったときのために備えてほしい。もう一つは、ちょっとでもいいから、どんな形でもいいから能登に関わってほしい」
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