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「サイレントパンデミック」薬の効かない薬剤耐性菌が静かに拡大中 2050年にはがん死者を超える恐れ

2024.07.29 18:45

「サイレントパンデミック」という言葉をご存知でしょうか?「静かに感染が広がる」という意味で、私たちが気が付かない間に病気の感染が広がっている現状があります。その背景には、ある「菌」の存在がありました。
 
田辺真南葉アナウンサー:
「病院で処方される薬。皆さん正しく飲んでいますか?その飲み方によっては健康状態に大きな影響をもたらすかもしれません」
   
感染症の際、医師から処方される抗菌薬ですが、この抗菌薬が効かない菌が世界で問題となっています。
  
福井大学病院で感染症を専門とする酒巻一平教授に話を聞きました。
 
福井大学・酒巻一平教授:
「(医師は)抗菌薬と言っているが、いわゆる抗生物質が効かないものが薬剤耐性菌で、それに感染した場合、治療法がなく治すことが出来なかったり、命に関わることがある」
  
私たちが気が付かない間に静かに感染が広がっていることから「サイレントパンデミック」とも呼ばれる「薬剤耐性菌」が、なぜ生まれるのかについて酒巻教授は「簡単に言えば抗菌薬を使いすぎている。医療者が処方しすぎていて、適正に使用できていない可能性がある」と指摘します。
  
「菌」と「ウイルス」はどちらも感染症を引き起こすため、ひとくくりにされてしまいがちですが全くの別物で、抗菌薬は「ウイルス」には効果はなく、あくまで「菌」を退治するための薬です。
  
体内には様々な菌が存在しますが、全ての菌が病気を引き起こすわけではなく、お互いにバランスを保っています。しかし、抗菌薬に耐性を持った菌だけが増殖することでバランスが崩れ、身体に悪い影響を及ぼします。
  
このまま治療効果のない抗菌薬を使い続けた場合、体内で増殖した薬剤耐性菌は、人から人へと感染していきます。薬剤耐性菌による年間の死者数は、2019年は全世界で約127万人とされていて、それが2050年には1000万人にまで増えると考えられています。これは、現在850万人とされる、がんによる死亡者を上回る数字です。
  
政府は2016年から2020年にかけ「薬剤耐性対策アクションプラン」を実施しました。これは、基本的な薬剤耐性菌に対する啓発活動や、抗菌薬使用量を3分の2に減らすことを目標としたもので、現在も継続して実施しています。
  
県内での取り組みについて酒巻教授は「県内の多くの病院が参加する『福井感染制御ネットワークFICネット』というものがあり、イベントを行っている。そのイベントで、抗菌薬はウイルスに効果がなく、風邪の多くがウイルスなので抗菌薬を処方しないことが多いということを啓している」と話します。
  
将来のためも、正しい知識を持ち向き合っていくことが大切な「薬剤耐性菌」について、私たちには何ができるでしょうか?
 
福井大学・酒巻一平教授:
「医療者が処方しすぎて、適正に使用できていない可能性がある。医師も気を付けていかないといけない。全ての感染症に抗菌薬が効くわけではないので、患者も抗菌薬を求め過ぎず、お互いに気を付けることが、抗菌薬の使用を減らし耐性菌を減らしていくことになる」

国の薬剤耐性に関する取り組みは他にもあります。2018年4月には「小児抗菌薬適正使用支援加算」という、医療機関に支払われる診療報酬の改定が行われました。
 
これは、風邪や咽頭炎または急性下痢症など、抗菌薬を使わなくて良い病気に対し、抗菌薬を使わなければ、初診に限り病院に診療報酬が加算されるというものです。
 
こうした改正やアクションプランも進められていますが、実際に使用する私たちも、改めて薬との向き合い方を考えていくことが必要です。
  
ポイントは「欲しがらない」こと。必要のない場合でも抗菌薬を欲しがってしまう人が多いのが現状のようです。医師の処方をしっかりと守りましょう。次に「飲み切る」こと。抗菌薬を処方された際は必ず飲み切ってください。飲んだり飲まなかったりといった中途半端な服用も、薬剤耐性菌を増やす可能性があります。
  
私たちも正しい知識をもって薬との向き合い方を考えていく必要がありそうです。

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