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創業230年・老舗漆器メーカーの挑戦 「分業体制」から「一貫生産」への大転換 産地の“後継者”育成も【福井】
日本有数の漆器の産地・鯖江市河和田地区では、職人の高齢化や後継者不足が深刻化していて、産地を守る上で大きな課題となっています。この課題を解決しようと、ある老舗漆器メーカーが創業以来続けてきた生産体制を大きく見直しました。
業務用漆器生産の全国の8割を占める鯖江市河和田地区。河和田で生産された漆器は「越前漆器」と呼ばれ、国の伝統工芸品としても知られています。
越前漆器は大きく分けて4つの工程を経て作られます。▼木を加工し器の形を作る「木地づくり」▼木地を補強し整える「下地づくり」▼漆を塗って美しく仕上げる「漆塗り」▼漆器を装飾してさらに美しくする「加飾」です。
河和田地区では、この工程をそれぞれの職人が行う「分業体制」で漆器を生産してきました。各工程に専門家がいることで、質の高い製品を仕上げることができます。
しかし、いま河和田地区では、職人の高齢化や後継者不足といった課題に直面しています。
中でも深刻なのが「木地づくり」の工程です。現在、河和田地区で伝統工芸士の木地師は3人です。年齢的に大量生産することが難しく、現状の分業体制では漆器の生産量を確保していくことが厳しくなっています。
一方、河和田地区にある創業1793年の老舗漆器メーカー「漆琳堂」では、主に「下地づくり」と「漆塗り」の工程だけをおこなっていて、「塗師」による漆塗りを得意とする工房です。
しかし、後継者不足や職人の高齢化という業界全体の課題に直面し、約230年続けてきた生産体制を見直す決断をしました。
漆琳堂の内田徹社長は「元々は『塗り』に特化した会社として、代々受け継いできた。ものづくりの課題として、垂直統合、つまり自分の製造部門の前後も今後整えていかないといけないとは聞いていた」と話します。
まず取りかかったのが、これまでやってこなかった工程の「木地づくり」です。7月には新しく「木地場」を整備しました。「塗りと木地では全くやることが違うので、異業種に取り組む覚悟で導入した」といいます。
自社に木地師はいないため、若い「木地師」を新たに雇用し、お椀などの丸物製品を
形から自社で製造できるようにしました。「漆塗り専業」の工房から、木地づくりから下地づくり、漆塗りまでを社内で一貫して行う生産体制への大きな転換です。この3つの工程を一つの会社が行うのは、河和田地区では漆琳堂が初めてです。
木地師は「塗り専門の人がすぐ近くにいるので、その人たちの意見を聞いて反映させることができる。木地師がいることで作れる新しいものを作っていけたら」と意気んでいます。
同じ社内に木地師と塗師が一緒にいることによって、器の厚さや形などの細かい調整が可能になり、これまでできなかったデザインの漆器を作れるようになり、生産できる漆器の種類も増えました。
また分業体制では、一つの形に対し、ある程度の生産量が必要でしたが、社内一貫の体制では少ない数から対応でき、オーダーメイドの受け付けもできるようになりました。
「越前漆器は全国でトップの産地になったということで、微力ながら自分たちの力で、さらに産地の活性化と後継者をどんどんと増やし、産地に若者が集うようにしていきたい」と内田社長は力を込めました。
創業から230年もの間続けてきた「分業体制」からの大転換は、若い世代の人たちが
越前漆器の世界に入りやすくするための決断でもあります。鯖江・河和田が誇る伝統工芸『越前漆器』の産地を守るために、老舗メーカーの新たな挑戦は始まったばかりです。
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