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40年超原発・再稼働の“条件”1年足らずに「反故」で関西電力に不信感 使用済み核燃料「県外搬出計画」遅れが及ぼす原子力政策への影響【福井】
関西電力は8月30日、福井県に対し、2026年から開始するとしていた「使用済み核燃料の県外搬出計画」に「遅れが生じる」と報告しました。この遅れが、県の原子力政策にどのような影響が与えるのか、取材しました。
8月30日、関西電力原子力事業本部の水田仁本部長が福井県庁訪れ「できるだけ速やかにロードマップの見直しに着手するとともに、今後公表される日本原燃の再処理計画を反映した上でご報告させていただきます」と発言。関西電力と国が2023年に策定したばかりの「使用済み核燃料の県外搬出計画」を見直すことを県などに報告しました。
40年を超える原発の再稼働の条件として2023年10月に県が提示した約束を、関西電力は、わずか1年足らずで反故(ほご)にしました。
関電の報告を聞いた杉本知事は「大変遺憾。昨年の10月にロードマップで合意していたわけだが、それがなくなった状況に立ち戻っていることをしっかりと受け止めて、不退転の覚悟を示していただく」と厳しい言葉を向け、県議会の清水智信副議長も「搬出の遅れは長年築いてきた立地地域との信頼関係を壊しかねない」と言及しました。
また、原発立地地域の美浜町・戸嶋町長も「他動的な要因とは言え、早々に暗礁に乗り上げたことは極めて遺憾であり、その影響の大きさを懸念する」としました。
厳しい非難とともに、これまで関電が幾度となく繰り返してきた「不退転の覚悟」という発言を引き合いに出し「確実に実行できる搬出計画の提示」を強く求めました。
そもそも搬出計画の遅れは、青森県六ケ所村の「使用済み核燃料再処理工場」の竣工の遅れに端を発します。
この再処理工場の運営を担う日本原燃は、当初9月末までの完成を目指していましたが、国の審査が間に合わず延期する事態になり、完成目標を2026年度中に変更しました。
一方、関西電力が2023年10月に示した使用済み核燃料の搬出先は、この六ケ所村の再処理工場に加え▼再処理の実証研究を行うフランス▼場所は未確定ながら2030年頃の操業を目指す中間貯蔵施設の3カ所となっていましたが、搬出時期や搬出量ともに六ケ所村の再処理工場が“計画の要”となっていました。つまり今回の延期により、関電の搬出計画は「頓挫」したわけです。
「不退転の覚悟」を求められたことについて、記者から受け止めを聞かれた水田事業本部長は「重く受け止めていまして、社に持ち帰り、社長含め関係役員を相談し、どう対処していくか考えてたい。再処理工場については見直しになるが、それ以外の使用済みモックス燃料の搬出や、中間貯蔵については、しっかり進めている」と話しました。
関電の使用済み核燃料の県外搬出を巡っては、これまでも幾度となく「延期」や「方針変更」がされています。この間も、県内の使用済み核燃料は減ることなく、溜まり続けています。
〈記者の視点:山下晋平〉
まずは、なぜこのタイミングで搬出計画の遅れが出たのかを見ていきます。2023年に関電が県などに示した搬出工程の計画では、搬出先は▼青森県六ケ所村の再処理工場▼フランス▼中間貯蔵施設の3カ所あります。
ただ、フランスへの搬出は「再処理の実証研究」を目的にしていて、2027年からの3年間で搬出量が200トンと少ないこと、一方の中間貯蔵施設への搬出についても2030年頃としているものの、現時点で確実な搬出先が決まっていないことなどから「六ケ所村の再処理工場」が県外搬出の主軸となっていました。
しかし、8月には「六ケ所村の再処理工場」の完成が2026年度中に延期することが正式に決まりました。関電の工程計画では、2024年に再処理工場が完成することを前提に「2026年度から搬出する」としていて、完成が延期となれば当然、搬出の開始時期にも遅れが生じる、というわけです。
関電が示した搬出計画は「2023年末までに中間貯蔵施設の県外候補地を示せなければ、40年を越える原発の稼働を停止する」とした県との約束の代替案で、県など地元自治体は、この計画をもって40年を超える原発の稼働継続に「合意」したわけです。
これまでの経緯を考えると、関電の信頼性に大きな疑問符がつく格好となりました。
関電は搬出計画がどの程度遅れるのかについて「現段階では未定」としていて、今後、六ケ所村の再処理工場の完成時期を鑑みて、早急に工程表を見直すとしてます。
県内の核燃料の貯蔵可能量は、リミットに近付いています。2024年7月末現在の各原発の運転状況では、使用済み核燃料の貯蔵プールが満杯になるまで、美浜原発と大飯原発が約5年、高浜原発は約3年の見込みです。
このまま県外搬出が進まなければ貯蔵プールが一杯になり、原発の運転を止めざるをえない事態も生じます。
一方で、関西電力が新設を検討している「乾式貯蔵施設」が建設されれば物理的な貯蔵量は増えますが、関電は現在、保管している貯蔵プールから乾式貯蔵施設に使用済み核燃料を移しても、空いた分のスペースは使わず、「貯蔵容量は増やさない」と県に約束しています。
さらに、この乾式貯蔵施設の建設には国の審査のほかに地元自治体の同意も必要で、今回の計画の遅れが、同意に向けた今後の議論にも影響を与えそうです。
搬出の遅れは、原発の稼働に直接、影響を与える事態となっています。
美浜町の戸嶋町長は、今回の関電からの報告を受け「原子力発電の事業推進には、立地地域の理解と協力、信頼関係が重要で、今回の件も信頼関係につながることを念頭に進めてほしい」と述べています。
また、杉本知事らが求めた「不退転」という言葉を辞書で引きますと「何事にも屈せず、心を曲げないこと」とあります。
原発には、立地地域の多くの人や企業、予算が関わっています。関西電力は、立地自治体の発言を重く受け止め、「確実に実行できる搬出計画」を示す必要があります。
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