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【追跡取材】「令和のコメ騒動」は繰り返されるのか “高値”傾向は変わらず 飲食店は“早めに確保”の動きも <福井発>
2024年夏に起きた「令和のコメ騒動」では、一時品薄となり全国各地の店頭からコメが消えました。あれから3カ月が経ち、新米の流通が進んで県内のスーパーの棚にもコメが並んでいます。「令和のコメ騒動」は繰り返されるのか。現状と今後の見通しについてスーパーや卸会社を取材しました。
◆2024年夏のコメ不足
2024年8月、全国の多くのスーパーからコメが消え、消費者の間で不安が広がった「令和のコメ騒動」。取材したAコープやしろ店の山上剛副店長は当時「在庫はバックヤードには全くなく、売り場に出ているだけですごく薄い状態」と頭を抱えていました。
2023年の夏の猛暑でコメの品質が低下し、主食用として流通する量が減少。需要面では、外国人観光客、いわゆるインバウンド消費の増加に加え、麺やパンと比べると値上がり幅が小さいことから主食としての消費が伸びました。
買い物客も「コメが無くなるのか…この先が不安」「1人1袋だけと書いてあるので(在庫が)少ないのかなとは思っていた」と不安な様子を見せていました。
さらに追い打ちをかけたのは、南海トラフ地震の臨時情報や台風です。古米と新米が入れ替わる端境期で在庫が少ないことに加え、災害情報の報道によってさらに備蓄に走る人が増えたため、店頭からコメが消えたのです。
◆2024年11月の現状
コメが品薄となった「令和のコメ騒動」から約3カ月が経った11月、再び福井市のAコープやしろ店を取材すると、新米の流通が進み、店頭にはコメがずらりと並んでいました。
Aコープやしろ店の山上剛副店長は「現在、コメの仕入れは何も難しくない。順調に商品も入ってきているし、商品は潤沢にある」と話します。
棚にはひと通りの銘柄が並んでいて、発注すれば滞りなく商品が入ってくる状況といいます。
一方で店頭価格はというと「ずっと高値が続いていて、この先下がる見込みもないし、このままいくと思う」と山上副店長。
新米の販売が始まって以降、店頭価格は変わらず高値が続いています。
農水省が発表している、スーパーなどでのコメ販売数量の推移を見ると、南海トラフ地震の臨時情報が発表された8月8日の週を境に販売数量が大幅に増え、お盆明けにはピークを迎えています。9月9日以降はコメの売れ行きは極端に落ち込んでいて、これは買いだめによる反動や高値による“コメ離れ”が理由と考えられています。
また、Aコープやしろ店では「コメ騒動」を機に売れ筋の品種や価格帯に変化が出ています。
Aコープやしろ店・山上剛副店長:
「今まではコシヒカリが一番売れていたが、新米が出て以降、価格帯が上がってしまいハナエチゼンが一番売れるようになった」
いちほまれやコシヒカリと比べて価格が安いハナエチゼンの販売数量は、2023年の約2倍になっています。山上副店長は「2025年産の新米が販売される前には不足する銘柄が出るかもしれない」と懸念しています。
一方、福井市にあるコメの集荷から卸業まで行う福井精米では、農家から仕入れたコメを県内外のスーパーや飲食店、他の卸会社などに販売しています。「令和のコメ騒動」から3カ月が経ち、保管倉庫には各地の農家から集まった新米が山積みされています。
そうした中、樋田社長は卸業界で例年と違う動きが見られると話します。
福井精米・樋田光生社長:
「本来であれば10月、11月頃は各産地の販売店や農協にコメが集まる時期なので卸売価格が下がる時期だが、今年はこの先足りるのかという心配が広がっているので、少しでも確保してしまおうという動きがあり、大手ほど買いに走っている」
例年この時期は古米も残っていて在庫量が多いため、卸会社同士の相場は下がる傾向にありますが、この先のコメ不足を懸念した業者が早めの確保に動いているため、価格が下らず高値が維持されていているというのです。
さらに樋田社長は、飲食店からの受注内容にも変化を感じています。
福井精米・樋田光生社長:
「1年間の数量契約で売ってほしいという話が増えていて、現段階で2025年8月、9月までの契約をしている飲食店が増えている」
飲食店からの受注についても、スーパー同様、低価格の銘柄の引き合いが増えているということです。
こうした状況を踏まえた上で、今後の見通しについて樋田社長は「(新米の)先食いもあって、先々に不安を感じるような不足感、在庫感がある。現状のままの動きが続くとおそらく足りないことになり“令和のコメ騒動”がもう一度起きるかもしれず、より早い段階、ひどい状況が起きることも予想はしている」と危機感を示していました。
◆今後の国などの対応
物価高、災害など様々な理由でコメ不足に陥った今回の事態について、国は関係者への聞き取りを行い▼各流通段階における供給状況は2023年と同程度かそれ以上だったが、8月の南海トラフ地震の臨時情報を受けた買い込み需要に供給が追いつかなかった▼品薄に関しての情報発信や流通関係者への働きかけが遅かったことが要因としています。
そのうえで今後は、各流通段階にこれまでより頻度を上げたこまめな調査を実施し、消費者にも分かりすく情報発信するとしています。
また、この国の方針を受けて、県もJAや県内の卸売業者を対象に在庫量や販売情報などを収集していくとしています。
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