番組情報
- フグの真子の粕漬け
- 2020年02月09日(日)放送
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若狭の冬の味覚の中で、王様といえば、まず思い浮かぶのが若狭ふぐ。お刺身(てっさ)、鍋(てっちり)、から揚げ、ひれ酒など、いろんな味わい方があります。普通、若狭ふぐといえば、稚魚から育てる養殖ものと思われる方が多いのではないでしょうか。しかし、今回訪ねた高浜町和田の「五作荘」で出される若狭ふぐは、ちょっと違います。
ご主人の今井清隆さんに伺うと、五作荘で提供している若狭ふぐは、5、6月ごろ産卵のために沿岸に近づき網にかかった天然のトラフグを、旬を迎える秋から春の彼岸まで海の中に作った金網製の生け簀で育てたものだといいます。
この栽培技術は、「蓄養」と言われ、清隆さんの祖父・今井五作さんが、昭和28年に若狭でフグの蓄養をはじめました。その当時、蓄養した若狭ふぐは、旬の時期に、関西方面に出荷していました。しかし、40年ほど前に、養殖のフグが出回るようになると、蓄養のフグの価格も下落し、経営が厳しくなってしましました。
経営を引き継いだ今井さんは、価格が安くなったことを逆手に取り、高浜町で営んでいた五作荘でもふぐ料理を提供し、都会から食べに来てもらうビジネスモデルを考えました。養殖のフグと違い、天然ものを蓄養した大きな若狭ふぐを使うことで、「てっさ」や「てっちり」など一般的なフグ料理の他に、外皮のてっぴと身の間にある内皮「とおとうみ」や、白子(精巣)なども提供することができ、お客さんからは大変喜ばれ、逆に力となりました。
「もっとお客を喜ばせたい」
その想いから今井さんは、和田の漁師が昔から食べてきた真子、卵巣を提供することを思いつきました。
フグの真子、卵巣には猛毒があり、通常は食べられません。しかし、高浜町の漁師達は鯖のへしこを漬ける際、一緒にフグの卵巣も漬けて食べていました。ぬか漬けにすると何故か毒が消え食べられるようになることを経験として知っていたのです。清隆さんは、このフグの真子の糠漬けを食べやすいように、塩漬けにした後、天日で干し、さらに粕漬けにしました。味は、濃厚で芳醇。思わず、ごはんが進む逸品です。宿で食べたお客からは、「まさか、あのフグの真子が食べられるなんて」と驚きの声が上がるそうです。
五作荘では、より多くの人に「フグの真子の粕漬け」を味わってもらおうと保健所の指導のもと、一般販売もはじめています。
「真子の粕漬けは、食べられるようになるまで、長い時間がかかるスローフード。是非高浜に足を運んで、ゆっくりじっくり味わってほしい」と今井清隆さんは、話しています。